建設一般の技術レポート、 NO.01、海外インフラ整備への取組み


海外インフラ整備への取組みについて、建設一般の技術レポートです。


文例 45  海外インフラ整備への取組み


 我が国の財政状況が厳しさを増し、国内の公共事業の削減が進む中、需要旺盛な海外事業への展開が求められている。建設分野における、海外インフラ整備への取組み方、国際貢献できる方策について、あなたの意見を述べよ。

1.世界の水市場の現状と課題

 国土交通省は2010年6月、日本の優れた水関連インフラ技術の輸出促進策を検討するため、産学官で構成する「海外水インフラPPP協議会」を設置すると発表した。国交省を含む関連6省(厚生労働、経済産業、環境、外務、総務)と政府系機関、東京都などの地方自治体、民間企業に参加を呼び掛ける。同協議会は、官民の連携で、アジアを中心とした新興国を対象に、水源確保から上下水道事業までをパッケージ化して輸出する方策を検討する。日本企業の海外での大規模なビジネス展開につなげる方針である。
 世界の水市場の規模は、現在の約35兆円程度から、2025年には約80兆円超にも上ると予想されている。また、配水管などの漏水や給水管の損失量などを指す無収水量率は、マニラの62%を最高に、アジアの主要都市で軒並み30%以上となっているのに対し、日本は約10%程度となっている。
 日本全体での水道有効率は92.4%(04年度時点)という高い水準で、東京に限って見れば現在の漏水率は約3%である。戦後に約80%とも言われた漏水率を、ここまで引き下げてきた我が国の技術や運営ノウハウは、海外輸出ビジネスとしての事業展開も十分可能だと考えられる。

2.官民連携による海外での水インフラ整備

(1) 水ビジネスによる海外展開
 国の財政状況が厳しさを増し、国内の公共事業の削減が進む中、建設業界などに、インフラ需要の旺盛な海外への事業展開の積極的な取り組みが求められている。海外水インフラ分野においても、官民が連携して上下水道事業などを海外展開できる、次のような体制整備を行う必要がある。
○ 水・環境・エネルギー・鉄道・建設業を始めとするオールジャパンでのインフラ等の輸出
  戦略の確立
○ 我が国の水ビジネスが国際展開を拡大する上での課題の明確化、優先して取り組む
  べき分野や地域の特定
○ 有望なプロジェクトの絞り込みやモデル的な実施可能性調査を行い必要な施策を検討
  する
○ 資金はあるが水がない国、水があっても資金がない国、水も資金もない国など、世界
  水市場ニーズの把握
○ 水関係施設と道路や鉄道、港湾などのインフラ整備をセットにした日本チームとしての
  海外への売り込み
○ 海外進出している海水の淡水化事業などでの金融支援や事業環境整備の促進
○ 上下水道施設などメーカーやゼネコンが持つパーツ技術を束ねることや利益を生み
  出す仕組みづくり

(2) 下水道事業の高度技術で世界へ貢献
 日本の企業は、下水を高度処理する膜処理技術や、下水汚泥からのエネルギー再生技術(消化ガス発電)、管きょの非開削技術(推進工法、更生工法)など優れた技術を保有している。しかし、上下水道については、事業が自治体主導型であったため、施設整備から運営・管理までを一貫して手掛けるノウハウがなく、「水メジャー」と呼ばれる欧米の大手企業の下請に使われるケースが多くみられる。
 そのため、水関連産業が持つ高度な技術と経験、自治体による上下水道の運転管理ノウハウなどを生かせるように、日本として優先的に取り組む分野や地域を特定してビジネス展開を行う必要がある。
 日本は上下水道の運転管理ノウハウを自治体が持っていることから、自治体による国際貢献のあり方やビジネスマーケットへの参入なども検討する。
また、上下水道や工業用水道だけでなく、汚染した水の浄化、再生利用などのビジネスについても検討することも重要である。
 世界の下水処理の問題については、衛生施設を欠いている国や地域が多いため、我が国は、優秀な人材を海外へ送り出し、高い技術を背景に世界で貢献していく必要性がある。

3.おわりに

 海外水ビジネスの展開を実現するためには、国家の成長戦略として水事業における官民連携を積極的に推進するとともに、それに併せた省庁横断的な推進体制の構築が求められる。建設部門に携わる技術者の一人として、総合的見地から建設事業を遂行すると共に、一層の技術研鑽に努める所存である。



RCCM試験
建設部門、土木・建築・設備工事のフリーソフト