にぎわいと活力あるまちづくりについて、建設一般の技術レポートです。
文例 43 にぎわいと活力あるまちづくり
厳しい経済状況や生活形態の変化から、人々の生活拠点として発展してきた多くのまちが衰退していく中、にぎわいと活力あるまちづくりを進めていくための社会資本整備のあり方について、あなたの意見を述べよ。
1.中心市街地の衰退の現状と問題点
中心市街地とは、人・もの・情報の交流機能及び都市機能が集積する拠点として、また、地域コミュニティの中核として、歴史的に市町村の中心として発展してきた市街地といえる。
中心市街地の現状については、全国の市区町村を対象にした「中心市街地活性化アンケート調査」の結果によると「空洞化はしていない」と回答している市 区町村は全体の約20%に過ぎず、空洞化が問題となっている市区町村が約44%にも上っている。また、都市規模別にみると、人口規模の小さい都市ほど中心市街地の空洞化が激しく、特に20万人未満の都市で空洞化の問題が大きくなっていることがわかる。例えば九州地方の都市をみると、人口規模30万人の都市を境に、それより小規模の都市で昼間人口と夜間人口双方が減少しており、業務機能の低下と同時に居住人口も大きく減少していることが報告されている。
これらの空洞化の背景については、それまでの鉄道やバスなど公共交通機関と徒歩・自転車を基軸とする都市構造から、自家用自動車交通を基軸とする都市構造へと大きく転換してきたことがあげられる。このような転換に対応できなかった中心市街地は空洞化せざるを得ず、車の利便性の高い地方都市ほど空洞化は深刻な状況となっている。
また、市街地の空洞化をもたらした原因についての質問結果からは、「中心市街地における商業施設の衰退」「中心市街地の車社会への対応の遅れ」「商業・サービス施設の郊外移転」「中心市街地の居住人口の減少」「中心市街地における公共交通の利便性悪化」などの回答が多く、人々の生活形態や経済・交通問題と大きく関わっていることがわかる。
2.にぎわいと活力あるまちづくりのあり方
人々の生活の心地良さ向上を図るため、それぞれの地域特性を発揮し、魅力溢れる心地良い生活圏の形成を目指して、まちなかのにぎわい創出や美しく魅力のある地域づくり、地域交通の利便性向上、地域の自立的な発展活動などを促進する必要がある。
(1) 多く世代が支え合う「やさしいまち」づくり
高齢者が子供たちと触れ合い、子育て世代が高齢者のノウハウを活用できる複合型支援施設の立地を促進する。空き家を有効活用し、ボランティア活動の場として提供しバリアフリーの高齢者住宅への転用を促進する。
(2) 歩行者優先の「やさしいまち」づくり
地域ニーズを踏まえ、歩道の拡幅、車両の乗り入れ規制、坂道の歩道ロードヒーティング、主要道路でのポケットパークやベンチの配置などを促進する。
(3) 暮らしやすい「やさしいまち」づくり
店舗や医療・福祉施設などを併設した共同住宅の建設を促進する。文化・娯楽施設も含めて徒歩圏内に多様な生活機能が集積される事業を促進する。
(4) 歴史的建物を活かした「美しいまち」づくり
市町村が所有する歴史的建物は率先して復原・改修し地域活性化につながる多様な用途に活用する。民間の歴史的建物は今後の利活用意向を把握し用途転用も含めて保全・活用を図る。景観形成指定建築物等が「使われながら保全される」よう居住機能を向上させる。
(5) 都市空間の「美しいまち」づくり
景観形成とともに防災対策の観点から無電柱化に努める。夜間も安心して散策できるよう街路灯や歴史的建物のライトアップを充実する。路上駐車の実態調査や住民の意向調査を実施し駐車規制の導入を検討する。
(6) まちづくりの主体の多様化「ともに動くまち」
NPO、民間まちづくり委員会などを設立し、まちづくりに関わる調査事業などを委託して運営をサポートする。ヤングカップル住まいりんぐ支援制度など、効果的な若年層の定住施策を実施して地域コミュニティの活性化を促進する。モデル街区を抽出し地域住民などと協働で空き家・空き地や未接道敷地を解消し、街区を更新する社会実験を実施する。
3.おわりに
真に安全で、豊かで、快適な社会環境を次世代に継承していく上で、建設部門に携わる技術者の一人として、総合的見地から建設事業を遂行すると共に、一層の技術研鑽に努める所存である。
-以 上-