建設一般の技術レポート NO.07、社会資本の老朽化が進行する中での技術開発


社会資本の老朽化が進行する中での技術開発について、建設一般の技術レポートです。


文例 39  社会資本の老朽化が進行する中での技術開発


集中的に整備されてきた我が国の社会資本は老朽化が進行している。厳しい財政事情のもとで、このような社会資本の管理はどうあるべきか、技術開発を含めた方策について、あなたの意見を述べよ。

1.社会資本ストックの老朽化の現状と課題

 高度成長期時代に社会的ニーズに応えるため集中的に整備されたわが国の社会資本は、今後20年間で建設後50年以上経過する施設の割合が半数程度になると予想されている。具体的には、道路橋では約47%、水門等の河川管理施設では約46%、湾岸壁では約42%の施設が建設後50年以上経過するとされている。
 また近年、整備されてきた社会資本について、建設後相当の期間を経過するケースが増えつつあり、老朽化に伴う障害事例が多くなっている。例えば、道路橋で通行規制が行われたり、下水道の老朽化により道路陥没が発生したりという障害が生じている。
 このように、社会資本全体の老朽化が急速に進行していく中で、厳しい財政事情のもと、適切・効率的な維持管理が社会資本整備における重要なテーマになっている。今後の社会資本の維持管理にあたっては、これまでの「事後的管理」から「予防保全的管理」に転換する戦略的な維持管理を推進する必要がある。

2.戦略的な維持管理を推進する技術開発

 社会資本の戦略的な維持管理を進めるにあたっては、対象施設の点検から、その健全度の評価を行い、劣化予測を行う。この結果に基づき、長寿命化に関する計画を策定し、補修や補強などの対策を実施する必要がある。そして、効率的でコストのかからない方策の技術的な検討を進めるとともに、非破壊試験等の効率的な点検に関する技術開発や既存施設の長寿命化を図るための補修工法の技術開発など、技術開発の取り組みをより一層推進する必要がある。
また、施設の健全度保持のため、点検や適切な補修対策等を効率的に行うなど、予防保全の考えに基づいた管理手法の技術開発を進める必要がある。
○ 大型コンクリート構造物中で劣化変状位置を非破壊で検知する、余寿命を正確に推定
  する技術開発
○ 防錆や美観景観に資する塗装、構造物の一部として使用される高分子部品の解明と
  抑制技術の開発
○ 配管、貯槽等に用いられるFRP(繊維強化プラスチック)の劣化診断の技術開発
○ 埋設・被覆状態の配管を検査する技術開発
○ 構成材料の劣化が大型構造物、産業プラントに及ぼすリスクを最小限にする設備保全
  手法の確立
○ 発変送配電設備や産業における重要な電気設備の絶縁劣化挙動オンライン診断技術
  の開発
○ 電気設備の余寿命を推定する技術の開発

3.既存ストックの他用途等への有効活用

 建築物に関しては、近年、廃校となった学校校舎の地域コミュニティ施設等への改修や、既存オフィスビルのマンションへの改修など、コンバージョン(用途変更)が増加しつつある。社会基盤に関しては、利用者が減少して存続が危ぶまれていた在来線を路面電車化し、地域住民の利便性が高まったことを契機として沿線地区での一体的なまちづくり事業が展開されている事例がある。将来的にはJR駅を挟んで反対側にある既存の路面電車との接続も予定されており、まちづくりのリーディングプロジェクトとして期待されている。
 財政制約下においては、このように既存ストックを改良し、機能を充実させて有効活用する施策を積極的に推進する必要がある。
○ 既設用排水路を活用したCCBOX整備による無電柱化推進計画の促進
○ 民間ビルを庁舎等へ転用する外観都市景観の保全
○ 廃線後の鉄道高架を活用した商業空間や緑地スペースとしての再開発
○ 鉄道廃線跡を自転車道に、鉄道橋を活用した遊歩道の整備
○ 県道トンネルを利用した低温貯蔵庫への活用
○ 小中学校の廃校跡を利用して、都市と農村の交流施設、文化芸術活動の拠点として
  活用する新たな都市と農村のネットワークの創出

4.おわりに

 厳しい財政制約の下、戦略的な維持管理を進めていくにあたっては、ライフサイクルコストが最小となるよう計画的な補修を推進する必要がある。
 私は、建設部門に携わる技術者の一人として、総合的見地から建設事業を遂行すると共に、一層の技術研鑽に努める所存である。

                                             -以 上-



RCCM試験
建設部門、土木・建築・設備工事のフリーソフト