河川砂防の技術レポート  土石流対策  NO.23、透過型砂防堰堤の役割と計画上の留意点について


透過型砂防堰堤の役割と計画上の留意点について、河川砂防の技術レポートです。


土石流対策 13 透過型砂防堰堤の役割と計画上の留意点について


透過型砂防堰堤の役割と計画上の留意点を、流砂系の総合土砂管理の観点も含め論ぜよ。

1.土砂を無害化して流す砂防づくりの推進

 近年、砂防ダムの満砂状態による土砂流出調節効果の減少、ダム湖の堆砂問題による下流への土砂供給の低下、下流河川の河床の洗掘・低下など、河川全域に至る土砂移動の不均衡が顕在化し、さまざまな課題が指摘され、景観・生態系等の環境面も含めた総合的な土砂管理への取り組みが求められている。
 今後は、土砂生産域から海岸部までを時空間的な広がりをもった「流砂系」として捉え、「土砂を無害化して流す砂防づくり」をキーワードに、流砂系を一貫した総合的な土砂管理を推進する必要がある。
 土砂生産域においては、生産土砂量の抑制、無害土砂を効果的に下流へ供給する砂防施設の整備として、スーパー暗渠砂防ダム等のオープンタイプダムの設置、既設砂防ダムのスリット化と排砂設備の設置、渓畔林や植生回復等による防災機能の高い森林の育成など、水生生物にやさしい渓流環境の保全を考慮した整備を推進する必要がある。
 また下流域においては、堆積土砂を、その目的や機能を損なわない範囲で除石し、下流の河床低下が著しい河道へ還元、海岸の養浜へ活用するなど、土砂の再生化システムを構築する必要がある。

2.透過型砂防堰堤の役割

 砂防堰堤は、不安定土砂の移動を抑制し河道の安定や山脚の固定を図る不透過形式と、開口部を有し平常時の流出土砂は流下させ計画的にダムの空容量を確保し、洪水時には流下する大径礫により開口部を閉塞して流出土砂を抑止する透過形式に分類される。また、透過型砂防堰堤は、土石流を捕捉し、土砂流出総量・ピークを調節して、かつ、渓流の水理的連続性を損なうことなく、中小洪水を含む平常時に土砂を流下させることを可能にする開口部を持つ砂防堰堤である。
 透過型砂防堰堤の役割としては、平常時(中小洪水を含む)の流出土砂を透過部において下流へ流下させることにより貯砂容量を確保し、その容量を用いて①土石流を捕捉、土砂流出を調節、および③渓流および生態系の連続性の確保があげられる。
①土石流を捕捉する役割は、短期的な土砂移動に対して、土石流を停止、堆積させる効果である。
②土砂流出を調節する役割は、短期的な土砂移動に対して、土砂流出総量を調節、または土砂流出ピークを調節する効果を発揮することである。
③流砂系の連続性を確保する役割は、長期的な土砂移動に対して、中小洪水時における自然な土砂の流下を促進させることである。連続性とは、中小洪水にて自然に土砂が流下すること、および魚類、昆虫、動物等が縦断方向に移動可能なことをいう。

3.透過型砂防堰堤の計画上の留意点

 透過型砂防堰堤の配置・設計は、時間的変化を含めた渓流特性を現地調査・文献収集などによって把握した上で、その特性にあった機能を発揮するように行う必要がある。ここでは土石流を捕捉するタイプと、土砂の流出を調節するタイプとの2つに区分し、計画上の留意点を述べることとする。

(1) 土石流捕捉のための透過型砂防堰堤
 土石流時は、洪水時および平常時に比較し、土砂輸送能力が大きく、流下する石礫の最大粒径が大きい。透過型砂防堰堤を設置する場合はこのような特性を利用し、洪水時および平常時は流出土砂を通過させて砂防堰堤の空容量を長く保持し、土石流時は大きい石礫により透過部が閉塞し、不透過型砂防堰堤と同様に土石流を捕捉するような閉塞型の透過型砂防堰堤を計画する。そうすることにより、土石流により閉塞するまでは、掃流状態で流下する土砂を砂防堰堤に堆積することなく通過させ、渓流の連続性を保つことができる。

(2) 土砂調節のための透過型砂防堰堤
 土砂調節のための透過型砂防堰堤は、流出土砂を一時的に堆積させ、洪水総流出土砂量、洪水期間中のピーク流出土砂量を低減させる。つまり、洪水時は堰上げにより堰堤上流の流速、土砂輸送能力を低下させて堆砂を促進させるが、洪水後半(減水期)および洪水後の中小洪水を含む平常時には、一度堆積した土砂を流出させる。自然の流水だけで堆砂・排砂を繰り返すため、除石を実施せずに効果を維持することができる。

4.透過型砂防堰堤の計画上の留意点

 透過型砂防堰堤の配置・設計は、時間的変化を含めた渓流特性を現地調査・文献収集などによって把握した上で、その特性にあった機能を発揮するように行う必要がある。ここでは土石流を捕捉するタイプと、土砂の流出を調節するタイプとの2つに区分し、計画上の留意点を述べることとする。

(1) 土石流捕捉のための透過型砂防堰堤
 土石流時は、洪水時および平常時に比較し、土砂輸送能力が大きく、流下する石礫の最大粒径が大きい。透過型砂防堰堤を設置する場合はこのような特性を利用し、洪水時および平常時は流出土砂を通過させて砂防堰堤の空容量を長く保持し、土石流時は大きい石礫により透過部が閉塞し、不透過型砂防堰堤と同様に土石流を捕捉するような閉塞型の透過型砂防堰堤を計画する。そうすることにより、土石流により閉塞するまでは、掃流状態で流下する土砂を砂防堰堤に堆積することなく通過させ、渓流の連続性を保つことができる。

(2) 土砂調節のための透過型砂防堰堤
 土砂調節のための透過型砂防堰堤は、流出土砂を一時的に堆積させ、洪水総流出土砂量、洪水期間中のピーク流出土砂量を低減させる。つまり、洪水時は堰上げにより堰堤上流の流速、土砂輸送能力を低下させて堆砂を促進させるが、洪水後半(減水期)および洪水後の中小洪水を含む平常時には、一度堆積した土砂を流出させる。自然の流水だけで堆砂・排砂を繰り返すため、除石を実施せずに効果を維持することができる。

                                                                                   - 以 上 -



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