河川砂防の技術レポート ダム  NO.15、ダムの安全性、調査・設計上の留意


ダムの安全性、調査・設計上の留意点について、河川砂防の技術レポートです。


ダム 01 ダムの安全性、調査・設計上の留意点について


ダムの安全性についての (調査・設計上の)留意点について述べよ。

1.はじめに

 ダムには、貯水機能を安全に果たすこと、必要に応じて洪水を安全に流下させること、周辺環境と調和させること等の機能が求められる。
 ダムの形式は、ダムの規模、ダムサイトの地形・地質、洪水吐の規模、堤体材料の有無等の諸条件を総合的に検討して選定され、大別すると、コンクリートダム(重力式ダム、アーチ式ダム)、フィルダム(均一型、ゾーン型、表面遮水型)が挙げられる。
 以下に、地形・地質条件面、設計面の両面から、ダムの安全性の評価について述べる。

2.地形・地質条件面からの安全性の評価(調査)

(1)地質調査の実施
 地形地質図・空中写真等を用いた資料調査により選定されたダム候補地において、第四紀断層調査、弾性波探査、ボーリング、試掘坑等の現地調査を実施して、ダムの安全性を評価(調査)する。

(2)貯水池周辺の地すべり調査の実施
 ダムの湛水に起因して、貯水池周辺の斜面が大規模な地すべりを発生させる場合がある。このため、広域的な地すべり分布の把握、ボーリング、地下水位調査による貯水池周辺斜面の安全性の評価は極めて重要である。

(3)ダム基礎地盤の安全性の評価(調査)
 ダム基礎地盤に求められる条件として、堤体から伝達される荷重によるせん断、変形に対して安全な岩盤であること、貯水池からの浸透流に対応できる遮水性を有する岩盤であること、断層や不整合、特に第四紀断層の構造的弱層の少ない安定した地質構造を有する岩盤であること等が挙げられる。ダム基礎地盤の安全性は、ダム形式や規模により多少異なるが一般的に、強度、変形性、透水性について評価(調査)する必要がある。

3.設計面からの安全性の評価

 ダム設計においては、外力として、静水圧・揚圧力等の水圧、堤体自重、地震時慣性力などを作用させて、安全性を評価する必要がある。
 重力式コンクリートダムは、上流面に鉛直方向の引張応力が生じないこと、せん断に対して安全であること、許容圧縮応力・許容引張応力を超えないことの3条件を考慮して安全性を評価する必要がある。
 アーチ式コンクリートダムは、基礎地盤の地形・地質の制約を受けやすいため、浸透流について十分検討する必要があり、地震時に大きな影響を受けるため、重力式ダムの2倍以上の設計震度を用いて安全性を評価する。
 フィルダムは、洪水規模が大きい場合、破堤に至る危険があるため、設計洪水流量をコンクリートダムの 1.2倍とる必要がある。また、遮水ゾーンの基礎では遮水性とせん断強度、遮水ゾーン以外の基礎ではせん断強度とパイピングに対する抵抗性を用いて安全性を評価する。
 グラウチングは、透水破壊・揚圧力の軽減対策として計画されるが、その計画については、地質・地下水分布等の現地特性を考慮して、カーテングラウチング、コンソリデーショングラウチング等を選定する必要がある。

4.おわりに

 ダム建設に伴うダム湖の出現は、周辺環境に様々な影響をもたらす。自然環境に関しては、生態系の生息域の分断・喪失等のマイナス面があるが、反面、広大なダム湖の出現は、水鳥や魚類の新たな生息域を生み、豊かな生態系保全に寄与することとなる。生活環境に関しては、水と緑が調和した美しい景観の創造、レクリエーションの場を通じ、地域の活性化に貢献することとなる。
 ダムには、安全な貯水・放流機能とともに、ダム湖の総合的な環境を持続していく機能が求められている。今後さらに、関係機関が一体となり、ダムの安全対策を実施する必要がある。

                                           - 以 上 -



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