災害から暮らしを守り安全安心を高める方策について、建設一般の技術レポートです。
文例 42 災害から暮らしを守り安全安心を高める方策
近年、我々の暮らしは自然災害により常に脅かされ、普段からの予防対策が求められて
いる。このような災害から暮らしを守り安全安心を高めるため、建設分野がとるべき方策について、あなたの意見を述べよ。
1.我が国の自然災害の現状と課題
近年では台風や豪雨による浸水被害の多発が懸念され、集中豪雨や局地的な大雨により身近な都市河川が氾濫したり低地やくぼ地が水没したりするなど、まちの中で被害が発生している。また、地下街や地下鉄、さらに住宅でも半地下の居住など地下空間利用が進んでいることから、浸水に対する危険度が増加している。1997年~2006年の10年間は従来に比べ集中豪雨の事例が顕著に増えている。気象庁の観測データによるこの10年間の豪雨は、1時間50mm以上の雨が3132回(77年~86年の10年間と比べ約1.6倍)発生し、1時間100mm以上の雨は51回(同約2.3倍)と異常な発生回数である。
大規模水害の多発から土砂災害も近年増加傾向にあり、国土交通省の資料によると1979年~1998年の20年間は災害発生件数 880件/年に対して、最近10年間の発生件数は1051件/年と1.2倍程度の増加となっている。宅地開発により山麓まで住宅地が及んでおり、今後ますます土石流や崖崩れの被害を受けやすい状況にあるといえる。
また最近では、地球温暖化による海面水位の上昇や水需給バランスの崩れなど、災害リスクの増加も指摘されている。沿岸域でも、台風激化等の災害リスクの増大や大規模地震・津波災害が懸念されるとともに、高潮災害等の頻発などに脅かされている。
高齢者の増加に伴う、安全・安心の確保は「住まう」の基礎であり、様々な自然災害から「住まう」を守るための対策が求められている。
2.災害に対する普段からの予防対策のあり方
自然災害に対する安全・安心の確保は、生活を営む上で最も基礎となるものであり、発生した被害に対する素早い応急対策や早期の復旧復興対策の実施、また原因や課題を解明した更なる災害への準備が重要となってくる。普段から災害予防対策を進め、安全・安心を高めるための施策を推進する必要がある。
(1) 浸水常襲区域に特化した水害対策
国民の安全、安心な生活を守るために、水害を軽減する河川整備が強く求められているが、厳しい財政状況の中では、災害河川や床上浸水被害軽減に重点をおく効果的な事業を実施しする必要がある。
近年頻発する局地的な集中豪雨に伴う浸水常襲区域の被害対策として、河川整備だけでなく、下水道や湛水防除による内水対策、流域における貯留浸透施設の設置、適切な土地利用の誘導や、森林保全などの流域対策について、市町など関係機関が一体となって、総合的な雨水排水対策を推進する必要がある。
(2) 警戒避難体制の整備強化による土砂災害対策
土砂災害から国民の生命を守るため、施設整備(ハード対策)による土砂災害対策を着実に進めるとともに、土砂崩れ等の前兆現象がみられた時には、速やかに避難することができる体制づくりを整備する。
土砂災害防止法に基づき土砂災害のおそれのある区域を明らかにし、地方自治体による警戒避難体制の整備を促進する土砂災害警戒区域等の指定を進める。
避難勧告等に必要な土砂災害に関する情報の提供に努めるなどのソフト対策を推進する。また、県と地方気象台が土砂災害警戒情報などを共同発表するとともに、警戒情報を補足するよう詳細でわかりやすい情報をホームページなどで提供する。
(3) 流域連合水防演習・複合型防災実動訓練の実施
河川における連合水防演習を主体に、地震等の対応を取り入れた連合水防演習・複合型災害防災実動訓練を実施する。訓練にあたっては、国や地方自治体だけでなく警察・消防・自衛隊及びライフライン関係企業も参加し、連携して複合型災害に対応する。
このような演習や懇談会を通じ、関係各機関の応急活動・情報共有等について意見交換を行い課題を検討することで、普段から大規模災害発生時における関係各機関の連携の必要性と強化を図ってゆく必要がある。
3.おわりに
我々建設技術者は、頻発する自然災害から暮らしの根幹を守り、本当の豊かさを実感できる生活環境を創造する必要がある。これを建設技術者自らのテーマとして、次世代の人々に負担を残さない強固な社会基盤を築き、自然と調和のとれた社会環境の実現に向けて努力していく所存である。
-以 上-