河川砂防の技術レポート  治水対策  NO.05、特定都市河川浸水被害対策法の公布された背景、その運用と方策


特定都市河川浸水被害対策法の背景、運用、方策について、河川砂防の技術レポートです。


治水対策 11 特定都市河川浸水被害対策法の背景、運用、方策


特定都市河川浸水被害対策法について、この法律が公布された背景、運用とその具体的な方策について述べよ。

1.特定都市河川浸水被害対策法が公布された背景

 流域の市街化によって、森林や農地といった保水機能の高い土地がアスファルトなど不浸透性のもので覆われること、水路に水を集めることにより流出域における「保水機能」が低下する。また、洪水時にはある程度の湛水が許容されていた水田などの土地が宅地へと変わることにより「遊水機能」が低下する。こうした保水機能や遊水機能の低下により平常時は流量が極端に少ない反面、流域に降った雨水が短時間に集中して流出するようになった。このため、河川や下水道に大きな負担がかかる一方で、その整備が追いつかないために溢水等が発生し都市機能の麻痺や地下街の浸水をもたらす、いわゆる都市型水害が頻発している。
 さらに、近年、時間雨量75㎜を超える集中豪雨が増える傾向にあり、都市水害の激化に拍車をかけている。平成11年の福岡水害、平成12年の東海水害など、近年都市部における浸水被害は、都市水害対策の重要性を改めて認識させている。特に、都市における水害は下水道による雨水排水が追いつかないこと等による内水はん濫においても大きな被害を発生する。
 こうした都市型水害に対しては、総合治水対策における河道整備の促進、任意の流域協議会による流域対策の促進、学校・公園など公共施設への貯留浸透施設の設置などが実施されてきた。しかし、都市化はこうした取り組みを上回る早さで進展し、河川整備は用地取得など現実的な困難に直面している。流域対策についても設置された調整池が埋め立てられるなどの事態も発生しており、新たな対応が求められている。
 これらの課題に対処し効果的な対策を行うためには、河川管理者、下水道管理者、地方公共団体が一体となった総合的な浸水被害対策が必要であることから、平成15年6月11日、都市型水害対策についての法律である「特定都市河川浸水被害対策法」が公布された。

2.特定都市河川浸水被害対策法の運用と方策

(1) 被害軽減対策としてのポンプの運転調整
 低平地においては、雨水排水をポンプにより行っているが、排水ポンプの運転により内水被害は軽減されるが、河川の負担が大きくなり外水はん濫を起こす可能性がある。一方、排水ポンプの運転を抑制すると排水ポンプ場周辺での内水被害を増大させるおそれがあるという関係にある。河川の破堤はん濫は流速や浸水速度が速く一般に甚大な被害に繋がる可能性が高いが、ポンプ場の運転を停止することは周辺の住民にとって重大なことである。このため、ポンプ場周辺で貯留施設の設置等のハード的な対策をとりつつ、被害最小化のためのルールづくりを行う必要がある。

(2) 河川と下水道の連携強化による治水対策
 特定都市河川はその流域での浸透阻害行為に対して対策を義務づけているが、流域は洪水時地形的に雨水が集まってくる範囲である「河川の流域」であり、特定都市河川の流域の大部分は下水道の排水区域であることが想定されるため、下水道との連携強化による治水対策が重要となる。
①治水安全度の早期向上
 用地の確保、施工の制約、費用高騰などの対策としては、治水上の役割分担を明確にし、整備のバランスと進捗を図ることが基本であるが、共同事業化、貯留施設の併用利用、ネットワーク化等により、治水安全度の早期かつ効率的な引き上げを図る必要がある。
②統合技術の開発推進
 河川と下水道は、適用法令や準拠する基準等が異なるため、計画・設計手法、流出・氾濫解析手法等に相違がある。お互いの計画手法や事業内容を理解したうえで、個別に進めてきた技術手法を統合発展させる技術開発を進める必要がある。
③施設の機能の付加
 治水対策として設置する貯留施設は、計画規模相当の降雨を対象とし使用頻度も少ないため、量対策優先とし、合流改善等の多目的利用を検討する必要がある。
④市民の理解と連携
 防災意識の高揚、家屋の耐水化、各戸貯留のような家庭に身近な内容から、アドバイザ制度、清掃・緑化活動の参加、水生生物調査のように市民団体等と連携して行うものなど、広範囲な取組みが求められる。

                                            - 以 上 -



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